相加・相乗平均
相加・相乗平均は、最大最小の基礎的方法のひとつ。
最大最小の問題は、7割が関数化による単調性の発見。のこり3割は相加・相乗平均と思って良い。
もっとも、分数関数を描ける理系諸君に相加・相乗平均など要らないのだが...。
・相加・相乗平均とは
相加・相乗平均とは、とある負でない実数a,bにおいて、
≧√ab
もしくは、a+b≧2√ab
が成り立つということである。
また、等号が成立するとき、a=bである。
相加平均とは、のことを、
相乗平均とは、√abのことを表す。
私達が生活でよく使うのは相加平均の方である。
いくつかやってみると分かるが、相加平均≧相乗平均が成り立つ。
テストの点などでやってみて欲しい。
また、これは値が3つ、4つと増えていくと、相加平均では分母も伴って増えていく。相乗平均では、三乗根、四乗根と増えていくことになる。
・相加・相乗平均を証明しよう
証明1
(√a-√b)² = a+b-2√ab≧0
よって、a+b≧2√ab
等号成立は、√a-√b=0、よって、a=bである。
証明2
上図のような円をとる。
直径はa+bであるから、半径は
また、図に√abと示したところは、方べきの定理より、xとおくと、x²=abより、x=√abである。(∵ab>0)
等号成立は√ab=、すなわち、a=bである。
・相加・相乗平均の使い方
まず、相加・相乗平均は、比べる数が0より大きいことが条件であるから、問題文にx≧0、y≧0などがあったら疑うべきである。
例1)x>0とするとき、x+の最小値を求めよ。
x>0、>0だから、相加・相乗平均の大小関係より、
x+≧2√x× = 8
よって、最小値8。
オーソドックスなパターン。分数関数化しても良いが、かけてxが消えることに着目すると良い。
例2)は、x>0を満たす。xはいくつで最小値いくつをとるか。求めよ。
(与式) = x-4+
ここで、x>0、>0だから、相加・相乗平均より、
x+ ≧ 2√x× = 2√3
等号成立はx=より、x=√3(∵x>0)
以上より、x-4+ ≧ 2√3-4
よって、x=√3で最小値2√3-4
一次式が分母、二次式が分子となり、分数がひとつ、分数でない変数がひとつの式の形にできる時も相加・相乗平均は役立つ。複二次方程式の場合もこれは使えるテクニックである。項にかけるとちょうど文字が消える2数があるかどうかがポイントとなる。
例3)a>0、b>0であるとき、次の不等式が成り立つことを証明せよ。
(a+)(b+)≧4
(与式) = ab+1+1+ = ab++2
ここでab>0、>0だから、相加・相乗平均より、ab+ ≧ 2√ab× = 2
等号成立は、ab=より、ab=1で最小値を取る。
よって、(与式)≧4
abと1/abが出てくるのが明らかに怪しい。かけるとabが消える、つまりかけると文字が消える2数は相加・相乗平均を使う。
・理系は分数関数でゴリ押そう
h(x) = であるとき、
h'(x) = である。
これを利用し、極値を求めてやれば良いのである。
また、h(x) = が、x=aで極値をとる時、その値は であるという公式(安田の公式)を利用して、最小値を求めていく。
例3) は、x>0を満たす。xはいくつで最小値いくつをとるか。求めよ。
メジアン数学より1問。メジアンはⅠAⅡBであるから分数関数は使わない前提であるが、折角だし分数関数で機械的に解かせていただこう。
h(x) = = とすると、
h'(x) = h'(x) = = =
極値では、h'(x) = 0 = より、x=±√3。ここで、x>0より、x=√3。
x=√3で極値をとるから、√3=aとすると、h(x)の極値での値は、 = 2√3-4
よって、x=√3で最小値2√3-4
・まとめ
特に文系では必ずと言っていいほど使うスキルなので、必ず使い所を覚えておくようにすると良い。
比べる2数が0より大きいとき、最小値を出す時に使うということ、また、等号成立は比べる2数が同じになる時ということを覚えておこう。
・+α)相加・相乗平均の一般化
冒頭で少し触れたが、もっと一般的に相加・相乗平均を表すと、
となる。n個の数でも、相加・相乗平均は成り立つのである。
証明
a₁,a₂,a₃,...,の相加平均をM、また、全てかけ合わせたものをNとする。
eˣ≧1+xに、x=-1 (k=1,2,3,...,n)を代入すると、
e^(-1) ≧
これを、k=1,2,3,...,nについて全て作ると、各辺すべて0以上であるから、片々かけあわせると、
したがって、
が示された。
加法定理の証明[東京大学]を5分で理解する
某大学の入試問題より1問である。
まずは自力で考えてみて欲しい。
sin(α+β)=sinαcosβ+sinβcosαを証明せよ。[東京大学]
解答
上図のような三角形について考える。
まず、sinα、cosα、sinβ、cosβについて考える。
このように抜き出すと、三角比の定義から、
sinα=
cosα=
また、次のようの抜き出すと、同様に、
sinβ=
cosβ=
である。
つまり、sinαcosβ+sinβcosα = + = ...①
ここで、△ABC=(c+d)×1×1/2
※辺BCを底辺と考えている。
また、△ABC=a×b×sin(α+β)×1/2
※2辺とその間のsinで考えている。sin(α+β)に関する証明であるから、sin(α+β)をどうにかして出す必要がある。
すなわち、(c+d)×1×1/2 = a×b×sin(α+β)×1/2
よって、sin(α+β)= ...②
①,②より、題意は示された。
補足
一見、辺の長さが1に縛られているように見えるが、実はそうではない。今回辺の長さを1としたところを1と考えた時、a,b,c,dがそれに何倍されているか、で考えれば良い。
三角比は相似な図形から考えられるから、無理やりその辺の長さを1としてやれば、どのような三角形であれ、証明されたことになるのである。
その辺の長さを1と定め、その比率でa,b,c,dを定義し、後は三角形を拡大しようと縮小しようとsinの値は変わらない。
組立除法
受験数学の計算問題や、模試の計算問題で必ずと言っていいほど出てくる、組立除法を学ぼう。
・組立除法とは
整式同士の割り算をスムーズにするテクニックのひとつ。原理については触れる必要は無い。やり方を機械的に覚えてしまおう。
例)x⁴-x³-4x²+5x-2を、x-2で割った商と余りを求めなさい。
手順1
上図のような土台を用意する。
手順2
上図のような規則で枠に数字を入れていく。
左から、高次の係数を入れていく。
なお、逆Lのような枠には、x-aで割る場合、aを入れる。
今回はx-2で割るので2を入れる。
x⁴+3x²+2x+1のように、抜けている次数がある場合は、x⁴+0x³+3x²+2x+1とし、枠には0を記入する。
手順3
上図のように左から処理していく。
赤矢印は足し算を、青矢印は2倍していることを示す。
※x-aで割る場合。青矢印ではa倍することとなる。
手順4
1番右を余りとし、それ以外は商である。また、商を出す際は、次数をひとつさげる。
なので、上図において商はx³+x²-2x+1、余りは0である。
・組立除法演習
(1)x³+2x²+4x+3をx-2で割った商とあまりを求めなさい。
(2)x⁴+x³+x²-1をx+1で割った商とあまりを求めなさい。
(3)3x³+7x²-x-1を3x+1で割った商とあまりを求めなさい。
二重根号処理入門
・二重根号とは
その名の通り、√の中に√が入っている根号のこと。
例えば、√(3+√2)などがそれに当てはまる。
※当サイトでは√の中に入っているかどうかを分別するため、√の中に多項式が入った場合は中を括弧で括ることとする。
このような数字が出てくると、数学的に非常に都合が悪い。
だから、できる限り二重根号は外しておきたいのだ。
・二重根号の外し方
とは言え、全ての二重根号がそう都合よく外れはしない。
もちろん、受験で問われるのは絶対に外れるものなので安心して欲しい。
二重根号を外す際は、√(√a+√b)²=√(a+b+2√ab)を利用して外す。
つまり、二重根号√(A+2√B)において、足してAになり、かけてBになる2数を探せば良いのである。
例1) 普通パターン
√(15+2√56) = √(7+8+2√(7×8)) = √(√7+√8)² = √7+√8
二重根号の中がなにかの二乗の形で表されるような式変形をする。
例2) マイナスパターン
√(8-2√15) = √(5+8-2√(5×3)) = √(√8-√3)² = √8-√3
-のパターンの時も変わらず、今度は(√a- √b)²を利用するようにする。またこの際、大きい数字-小さい数字にすること。
小さい数字-大きい数字にすると√の中の値がマイナスをとり、虚数となってしまうためである。
例3) 係数2がないパターン1
√(11-√40) = √(11-2√10) = √(10+1-2√10×1) = √(√10-√1)² = √10-1
√の中から2√の形を作れると良い。
例4) 係数2がないパターン2
√(5-√21) = √((2×5-2√21)/2) = √((7+3-2√7×3)/2) = √7-√3/√2 = √14-√6/2
√の中から2√の形が作り出せない時、分母に2をつけることにより、無理やり2を作り出す。
・二重根号が外せる条件
二重根号が外せる時にはとある条件が存在する。
二重根号が外せる時、二重根号√(A±2√B)において、A²-4Bが平方数になるという決まりがある。そうでないとき、外すことはできない。
証明) 足してA、かけてBになる自然数a,bが存在すれば良い。
この時、(x-a)(x-b) = x²-(a+b)x+ab = x²-Ax+B =0が、自然数の解を持てばいい。また、解はx=a,bのふたつである。
これが自然数となるためには、判別式が平方数とならなくてはならない。よって、A²-4Bが平方数になる。
例5) 外せるか、外せないか
√(5-2√6)において、A=5,B=6とすると、
A²-4B=25-24=1。1は平方数なので、外せる。
例6) 外せるか、外せないか
√(7+2√5)において、A=7,B=5とすると、
A²-4B=49-25=24。24は平方数では無いので、外せない。
・練習問題
(1)√(13+√168)の二重根号を外しなさい。
(2)√(6-2√5)の二重根号を外しなさい。
(3)√(2-√3)の二重根号を外しなさい。
(4)√(7-√(21+√80))の二重根号を外しなさい。
(5) (√(7-4√3))²⁰¹²(√(7+4√3))²⁰¹⁰を計算しなさい。
解説は動画をご覧下さい。